私ね、キングダム好きだったんですよ。
最初は「なんか微妙な絵だなー」と思って敬遠しつつ、漫画喫茶で読んでみたらめちゃくちゃ面白くて、一気に30巻くらいまで読んじゃいました。
だからこそね、今のキングダムを読むと「つまらない!」と感じずには居られないわけです。
キングダムがつまらなくなったと感じる3つの理由
テンポ悪い
合従軍以降のストーリー、テンポが悪すぎません?
それまでのキングダムを見てみると…
■合従軍まで
6〜7巻 初陣・蛇甘平原(麃公と呉慶の戦い)
11〜16巻 馬陽防衛戦(王騎が死ぬところ)
17〜23巻 山陽攻略戦(廉頗や輪虎)
25〜33巻 合従軍(5カ国全部敵)
■合従軍以降
37~40巻 嬴政即位編
41〜45巻 黒羊攻防戦編
46~59巻 鄴攻略戦編
合従軍は多少長いですが、あれは敵が大量にいて、かつ部隊も頻繁に移り変わっての戦いなので、それほどテンポ悪いとは感じません。むしろ「不抜」までノンストップで読みたいくらいにはアツいです。
おかしくなってきたのは、黒羊あたりから。大して重要でもない戦をひたすら長く描写したら、そりゃあダレるに決まってますよね。鄴(ぎょう)とかさ…その戦、そんなに大事?
展開がワンパターン
六将級、どんだけおんねん!!
キングダムの序盤はね、燃えましたよ。
秦には六将という圧倒的過ぎる実力を持った将軍がいて、他の国は六将の強さに震え上がった!実際、六将である王騎のカリスマオーラは半端じゃなくて、「うぉぉ!!このオカマかっこええやん!!!」とか思ってたわけです。
ところが、物語が進むにつれて下がる六将の株。
六将級が多すぎるんですよ。
あいつも六将、こいつも六将。
強い敵が次々登場するのはバトル漫画の宿命なので当然と言えば当然ですが、「六将級」という言葉でしか敵の強さを見せられないのはあまりにもワンパターン。
あまりにも六将級がバーゲンセールされるせいで、「実は王騎って大したことなかったんじゃないか?」と感じてしまう始末…そもそも、武力だけが将軍に必要な器じゃない!みたいな話だったのに、結局敵のスゴさを示す指標が武力しかないからこんな事に。
あと、ワンパターン展開なのがもう1つ。
何でも気合で解決しすぎ。
いやね、「主人公が、限界まで力を振り絞って勝利!」みたいな展開は少年誌では王道だと思うんですよ。序盤は荒削りながら勇気と精神力を持った信が、敵の強キャラを上回る展開は燃えたし、それがキングダムの魅力だったと思うんです。
ただ、さすがに毎回
「実力は負けてるけど、気合で勝ちました!」
みたいな展開は飽きます。
苦戦する要素ないくせに秦軍が苦戦して、最終的に信と敵のボスの一騎打ちになって、最後はルァァ!で敵を両断するところまでが様式美。そろそろ、これまでの戦いで得た技術や思考を活かして勝つ!みたいな将軍らしい勝ち方があってもいいじゃないですか。
(主に鄴の)ストーリーと知略合戦がひどい
そもそも鄴って本来は、
「李牧と王翦という別格の将軍同士の知略合戦!!」
というのが魅力だったはずなんですよ。
でも、フタを開けてみればいきなり李牧は「あの城は通常より弱く作りました!」みたいな事言いだすし、そして実際に侵入されたら「兵隊足りません!王都の兵出してください!」とか言い出すわけです。
いやいや、最初から王都の軍勢引っ張り出さないと成立しないような作戦立てるなよと。敵は秦だけじゃないし、李牧ってこの時点でそれなりに負けや失態をしてるので、王様からすればそんな武将に兵を預けるのは謀反のリスクだって高いです。
出兵を断った超王に向けて
「暗い…あまりにも…」
とか言い出しちゃう始末。
そして終盤で、斉の侵入を許してしまった(仮に王都兵も出兵させていた場合、首都陥落のリスクが大いにあった)という展開になったことで、なおさら李牧の無能ぶり&超王の正しさを強調することに。
他にも、
・ワープして敵の武将を打ち取る李牧!
・本能型を兵に仕込む、という意味不明な概念
・対する王翦の作戦は「何も考えず突っ込めばいい!」
・「やりますね…王翦…」
・こちらは隊の覚醒待ちだ!!
・「城主は賢人です。あと3日は持ちこたえるでしょう(食料不足なのに)」
という壮絶な知略合戦が繰り広げられることに。
戦国時代でトップクラスのはずの2人の李牧と王翦の戦いが、もはやツッコミどころしか無いという異常な展開。素人が意見するのは大変失礼ではありますが、これシラフで考えたの?と思うくらいには怒涛の展開です。
そして物語は衝撃の冥界編へ…
李牧一味の存在が不要
この漫画は李牧によって価値を失った。
と言っても過言ではないほど、李牧一味に魅力がありません。
作者のなかでは李牧は完全無欠の強キャラなのかもしれませんが、「大口叩く割に負けまくって、龐煖頼みでなければまともに勝てないヤツ」くらいのイメージしかありません。
実際、李牧の作戦がハマったのって王騎を倒した時くらいじゃないですか?
その後は燕の劇辛将軍(龐煖には慣れておるわ、とか言ってやられた人)には普通に作戦を見破られて龐煖に助けてもらい。麃公将軍にも陣を突破され、結局ホウケンに助けてもらわなければ終わってたという。そして合従軍では見事に作戦失敗…
史実では登場しない戦に李牧を登場させるせいで、李牧が完全に負けまくりの単なる無能になってます。そして合従軍が失敗した時点で、李牧が何の処罰も受けてないのはさすがにおかしいでしょ。
で、この李牧さん。
自信満々で負けを認めないのが、なおさら魅力を落としてるわけです。
どんなに自分の策を見破られても、どんなに負けても
「私に用兵と策略で適う者なんていませんけど何か?(ドヤァ)」
みたいな雰囲気を出し続けるじゃないですか。
でも何度も無様をさらしてる状態でドヤ顔してもむなしいだけというか…いっそ李牧だって敗北をしっかりと認めて、成長するキャラにしてしまえば印象だいぶ違うと思うんです。李牧が現実の見えてないキャラになってるのが、大きなマイナスですよ。
そして、あとは李牧のお友達の面々。
カイネとかフテイ(マスクマン)とか舜水樹とかいうオリキャラとか。この辺の方々は、特に何もしてないくせに「お前らに李牧様の策略を見破れるかなぁ?(ドヤァ)」みたいに自信満々だから腹立ちますね。
それにコイツらキャラ立ってないですもん。
何が得意という描写も少ないし、「李牧の部下A、B、C」みたいな印象しかありません。部下全員が「李牧をヨイショする、なんかすごい武将」みたいになってるのが問題ですね。
あとは、鄴でとうとう亡くなられたホウケン。
彼、理由もなく突如出没するだけじゃないですか。
動機も弱い(左目から涙が流れる衝撃な事実は明かされましたが)し、ただ単に突如現れて味方を削っていくランダムエンカウントな存在で、ヘイトが溜まるだけ。信が武力面で乗り越えるべき存在!みたいなライバルキャラにしたかったんだと思いますが、それならホウケンは正々堂々と戦うキャラにしなきゃダメでしょ。
なんで毎回狙ったみたいに、弱った相手のところにピンポイントで出現するんですか。これじゃあ信が満を持してホウケンを倒しても、「闇討ちを繰り返す卑怯な暗殺者を倒したぞ!」みたいな印象になりますよ。王騎の敵討ちという感じもせず、ホウケンからなにか受け継ぐわけでもなく、本当に哀しいキャラ…
信って成長してなくない?
趙の首都目前の都市、邯鄲(かんたん)を攻略し、とうとう信は将軍に!!
けど、実際のところ信って成長してます?
たしかに武力で見れば、災害みたいな扱いをされたホウケンをぶった切ったあたり、これ以上ないレベルに成長してると思います。(というか今後も信が武力面で苦戦したら、ホウケンにやられた面々すべての評価が下がり続けることに…)
でも、信の目指す大将軍って単に腕っぷしだけの武将じゃないはずです。王騎の姿を追うなら武力はもちろん、知略や人を惹き付ける強力なカリスマ性などすべてを兼ね備えて、「天下の大将軍」になれるわけです。
ただ、今の信って知略とかないじゃないですか。
これは河了貂の扱いを間違えた時点でどうしようもないのですが、河了貂=軍の頭脳、信=武力担当になってしまった時点で、もう信は知略での成長を放棄したようなものなんですよね。
「俺には本能型の嗅覚がある!ルァァ!!」
みたいな感じで隊を率いちゃダメでしょ。
それに精神面もそれほど成長していないし、「天下の大将軍」という目標に対して、単に体と武力だけがそのまま大きくなってしまったような違和感があります。信もそろそろ腕っぷし意外も成長しても良いんじゃないでしょうか。
読者は無知だけど、バカじゃない
秦の始皇帝が中華を統一するまでの詳しい流れなんて、日本人の0.1%くらいしか知らないんじゃないでしょうか。他にもドンドンドドンの汗明が実は最強の武将どころか文官だったことも、我々は知らないのです。むしろ、気持ちよく騙してくれるなら史実なんて捻じ曲げてもいいし、それで面白くなるなら素晴らしい漫画だと思うのです。だから史実と違う展開があったところで、別におかしいとは思いません。
でも、バカでもおかしいと感じる展開の連続はダメでしょう。
・どれだけ失敗しても絶対に処罰されない李牧一派
・もはや地形を無視してワープを繰り返す軍勢
・兵糧が無いのに、いつまでも元気に動き続ける兵士たち
・不必要なまでの秦軍の弱体化(なぜ毎回劣勢にする必要が?)
・秦の驚異を目の当たりにしながら、イキって油断しまくりの敵国たち
・どれだけ兵を失っても、無限に湧いてくる敵兵たち(趙の動員とかおかしい)
なんというか最近のキングダムは、
「ほれほれ、面白ければお前ら細かいところなんて気にしないだろ?」
という驕りみたいなものが見える気がします。
そりゃあ確かに春秋戦国時代の歴史なんてそこまで詳しく知らないし、キングダムを見てる人間の99%は壁将軍が実在の人物だと思ってるレベルだと思います。
だからオリジナルキャラが活躍したり、独自の解釈が入るぶんには気持ちよく騙されて楽しめる。けど、読者は無知であってもバカではないのだから、明らかに違和感のある展開の連続はいい加減冷めます。
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