2020年早々、イランとアメリカの対立が激しさを増しています。
イラン革命防衛隊の司令官、ソレイマニをアメリカが暗殺したことで一気に戦争モードに突入したわけですが、「結局、アメリカとイランどっちが悪いの?」とイマイチ分かりづらいですよね。
単純に、軍の司令官を殺害するという事態だけ見れば明らかにアメリカが悪いです。例えば自衛隊のトップがいきなり韓国や中国に暗殺されたら、もはや宣戦布告とすら受け取れると思います。
ただ、イランとアメリカの関係悪化は今に始まったことではありません。
アメリカとイランの仲が悪くなった経緯を知らないと、どちらが悪いと判断するのも難しいです。アメリカとイラン、それぞれどのような落ち度があるのかを紹介していきます。
イランとアメリカ、どっちが悪いのか?
イランとアメリカの関係悪化は今に始まった話ではありません。
そもそもイラン革命が1978年に起きたのもアメリカへの不信感(あと王政への不信感)が原因で、それ以前からイランはアメリカに対する悪感情が強くなっていました。
アメリカに石油持っていかれるし、王様はアメリカの傀儡のごとく動くし、経済も良くないし…そんな不満が今のイランの原点なので、その時点でアメリカとイランは対立関係にあることを理解しておく必要があります。
そして現在もイランとアメリカの関係は悪化し続けています。
過去の戦争に白黒つけるのは難しいように、
「アメリカとイラン、どっちが悪いのか?」
と言っても一概には言えないところがあります。
そこで、アメリカとイランが行ったそれぞれの問題点を見ていきます。
→核兵器を作っている&製造の再開
→下部組織(ヒズボラ等)を使ったゲリラ攻撃
→ホルムズ海峡でのタンカー拿捕など
→アメリカ大使館の襲撃
→そもそも、イラクやアフガニスタンで戦争したせいで恨まれている
→核合意からの強引な離脱&経済制裁
→ソレイマニ司令官の殺害や報復空爆
ソレイマニ司令官の殺害の原因は
アメリカがソレイマニ司令官を殺害し、イランが報復を宣言した
↑
イランが民兵組織(ゲリラもしくはテロ組織)でアメリカ軍を攻撃した
↑
アメリカ軍はイラク戦争の時点で周辺国から恨まれている
アメリカが殺害したソレイマニ司令官は、イラン革命防衛隊のコッズ部隊(暗躍部隊)のリーダーです。外国でのイラン派閥(イスラム教シーア派)を保護することを題目に、アメリカに対抗すべく民兵組織を支援しています。
その中には、アメリカがテロ組織に指定している組織もあります。
そして、直接ソレイマニ司令官が手を下したわけではないにせよ、イラクなど周辺諸国でアメリカ軍基地がたびたび襲撃されています。襲撃したゲリラ組織イラン革命防衛隊が関与しているのだから、実質的にはイラン軍の末端みたいなものです。
こう聞くと、アメリカの正当防衛に思えますね。
でもそうカンタンな話ではなくて、アメリカは中東で恨まれまくってるわけです。
イラク戦争で国を破壊された人がたくさんいて、そういう人たちがゲリラ組織に入る。もちろんイランがそういった組織を支援しているのは事実ですが、そもそもイランがいなくてもアメリカは攻撃されています。
実際、本来シーア派とスンニ派で仲が悪いイラクの民衆も、今回のアメリカによるソレイマニ司令官殺害に対してかなり非難の声が挙がっていて、滞在しているアメリカ軍の速やかな撤退を要請するに至りました。
だから中東の混乱に乗じてイラン、特にその急先鋒であるコッズ部隊のソレイマニ司令官が暗躍しているのは事実ですが、もとを正せば中東で戦争しまくったアメリカの自業自得であるとも言えます。
ただ、ゲリラ組織を過激化させてしまっている(復讐の武器を与えてしまっている)のはイランなのも事実なので、この報復合戦を見ればイランのほうが分が悪いですね。
核合意からの離脱
オバマ大統領がイランと結んだ合意。
イランは核開発を緩める代わりに、アメリカは経済制裁を解除する。ポイントは「ペースを緩める」ということで、核兵器開発を全面的にストップさせる合意ではないということです。
これはオバマ大統領の押しが足りなかったとも言えます。
一方で、それほどにイランは核兵器の開発を止める気はなかったとも言えます。
だからこそオバマ大統領は「ペースを緩める」核合意をしました。
ところがトランプ大統領は「ペースを緩めるだけなのに、経済制裁解除なんてもってのほかだ!」と自分たちできめたはずの核合意から離脱してしまいました。当事者が離脱するなんてさすがアメリカですね(笑)
結果、アメリカは経済制裁を再開し、それに抗議したイランや他の国の言葉も受け入れられなかったため、結果的にイランは核開発を再開。こうして核合意は完全に無意味なものになってしまったわけです。
アメリカの言い分:核開発を止めない合意に意味はない
イランの言い分:アメリカが勝手に取り決めを破った
これ、実際のところ正当性があるのはイランです。
少なくともイランはIAEAの査察も受け入れているし、実際に核合意を守っていると視察団も報告しています。一方でアメリカは「前の約束、やっぱ気に入らないから止めるわ」とかなり身勝手な行動をしているのが現状です。
なので核合意に関しては、イランよりアメリカが悪いと言えます。
ホルムズ海峡問題も
去年、イランのホルムズ海峡で日本のタンカーが襲撃されたのは記憶に新しいですね。
アメリカの言い分:イランが関与した証拠が動画にある
イランの言い分:攻撃なんてしていない!
ちなみに動画は不鮮明なのと、タンカー乗組員の証言(ミサイルなどの飛来物にやられたと証言しているのに、アメリカの提供した動画は小型船で爆弾を船にくっけているものだった)事からそれほど証拠として重要視されていません。
ただ、イランもタンカー攻撃する理由がないわけではない。
(というより、イギリスのタンカーを拿捕したりしている)
だから日本のタンカー襲撃がイランの仕業かはともかく、イランがホルムズ海峡で国際社会に対してプレッシャーを掛けているのは事実です。それを考えたら日本タンカー襲撃した可能性はあります。
一方で、アメリカはアメリカでベトナム戦争時の自作自演(トンキン湾事件)による前科があるので、戦争する理由付けをするために証拠をでっち上げる国でもあります。
どっちが悪いかはともかく、日本はアメリカにつく
ここまで読んで頂くと分かるように、
「イランとアメリカ、どっちが悪い?」
と言われても一概には言えない事がわかると思います。
そもそも40年以上アメリカとイランは仲が悪く、その間にお互い報復合戦を続けてきたところがあるので、もはやイランとアメリカにとって「どっちが先だったか」みたいな過去の話はどうでもよくなっています。
イランはずっと反アメリカ。
アメリカはずっと反イラン。
日本はイランともある程度有効的な関係を築いていますが、しょせんはアメリカに飼われている立場なので、アメリカがイランを非難すれば、日本も確実にそれに続きます。
ただ、やはり核合意の離脱や、報復とはいえイランのナンバー2を殺害するような行動は宣戦布告同然なので、個人的にはアメリカが少々引き下がるべきだとは思いますけどね。
コメントを残す