イランのホルムズ海峡閉鎖の理由はなぜ?日本への影響をわかりやすく

2019年7月19日、ペルシャ湾にあるホルムズ海峡でイギリス船籍のタンカーがイランにより拿捕されました。

このニュースを聞いた時、「民間のタンカーを公海上で拿捕するなんて、イランは国際違反をしている」、そう思われた方も少なくないでしょう。

でも、よくよく考えると原因もなくこんなとんでもない行為をイランがするはずはありません。なぜなら、イランは国際社会の優等生と呼ばれているのですから。

そもそもホルムズ海峡ってなんなの?なぜイランはホルムズ海峡を閉鎖したのか?日本への影響もわかりやすくお話します。

ホルムズ海峡ってどんな場所?

ホルムズ海峡はペルシャ湾とオマーン湾の間にある海峡です。

このルートが封鎖されて影響があるのか?と感じるかもしれませんが、中東は石油や天然ガスの一大産地です。

ホルムズ海峡を通過するタンカーも多く、1日あたり約1700万バレルの石油が運ばれています。数字で言われてもピンと来ないかもしれませんが、世界の消費量の2割がホルムズ海峡を通過するタンカーに占められています。
だから

ホルムズ海峡の閉鎖は、イランの伝家の宝刀だ

なんて言われます。

イランがホルムズ海峡を封鎖すれば、世界経済の一部を動かせるからです。

歴史的にみても、1980~1988年のイラン・イラク戦争の時には、両国が無差別にホルムズ海峡において民間のタンカー約400隻に銃弾を撃ち込みました。これを「タンカー戦争」といいます。
このようにイランが「経済戦争」を仕掛ける場合は、ホルムズ海峡を閉鎖するのがいつもの手であるといえます。

では、今回はどうしてイランがホルムズ海峡でイギリスの船を拿捕したのでしょうか。イランが一方的に悪いといえるのか、今回の事件の時系列を見てみましょう。

今回の事件の時系列

イギリスとイランの動きに絞って時系列を見ていきます。

2019年7月4日、イギリスがイランのタンカーをペルシャ湾内で拿捕しました。

理由は、イランがシリアに向けて原油を輸出したからです。EUによる経済制裁違反にあたり、イギリスがイランのタンカーを拿捕した事件でした。

これを受けてイランは、同月9日「イギリス船」を最高の脅威とみなして、「危機的レベル」に引き上げました。ここでの、重要ポイントは「EUの船」でなく、「イギリスの船」にあります。
つまり、イギリスは現在はEUの一員ですが、イランからすれば7月4日の拿捕は「EU」によるものではないと思っている。

あくまで相手は「イギリス」だと思っているわけです。そこにはアメリカが絡んできます。

次に、アメリカとイランの動きを見てみましょう。

2019年6月に、イラン革命防衛隊がイラン上空でアメリカのドローン偵察機を撃墜しました。理由は、イランの領空侵犯にあります。

この事件後、7月18日にはアメリカ海軍の軍艦がペルシア湾を航行中にイランのドローンを撃ち落としたと発表しましたが、理由はアメリカの軍艦に必要以上に接近したからといいました。

不思議なことに、イラン政府はアメリカ政府の発表を否定し、「ドローンが撃墜された事実はない」と発表しました。

ここでいったんまとめると、今回のイギリス船の拿捕は、7月4日に起きたイギリスによるイラン船の拿捕に対する報復ともいえます。

そして、アメリカとイランの動きを付け加えると、今回のイランによる拿捕はアメリカの意向をうけたイギリスが7月4日にイラン船を拿捕したから、アメリカに対する何らかのメッセージとして7月19日の拿捕をしたのではないか、と推測できます。

では、イランはアメリカにどのようなメッセージを送りたいのでしょう。アメリカとイランの関係をご説明いたします。

イランからアメリカへのメッセージ


今回のイランによるイギリス船の拿捕は、アメリカのイランに対する経済制裁の緩和をもとめるメッセージだと推測できます。

イランはずっと以前から核兵器を保有しているのではないかと疑われてきました。国際社会の優等生たるイランはその度に核査察を受け入れ、国際社会の支持の獲得に努めてきました。

そして、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・中国・ロシアとの6か国協議でイランは核合意。イランは原子力の平和的利用に同意、イランへの経済制裁もいったんは止まりました。

しかし、2015年7月、アメリカが一方的に核合意から離脱、ふたたび経済制裁へ転換しました。

これによりイランの経済は混乱し、市民は乏しい物資による苦しい生活になっているといわれています。
なぜアメリカはイランを目の敵とするのでしょうか。そこには歴史的・文化的その他さまざまな理由があります。

あえて経済的な面からアメリカ側の言い分を考えてみます。それは、全世界の石油・天然ガスの2割をイランがホルムズ海峡の閉鎖によって、左右できるからではないかと思います。

さらにいえば石油埋蔵量世界第4位のイランは、経済大国にのしあがる十分な実力があります

。歴史的にみても、建国当初から反米を主張してきたイラン。もしこのような国が経済大国となり、ロシアや中国と組めばアメリカにとって恐ろしい事態となるでしょう。
他方、イランの言い分はどうでしょう。

アメリカが恐れるような敵対国にイランがなるとは思えません。

というのも、北朝鮮とはちがい常に国際社会への支持獲得に動く国、しかも国際協調のため核査察や核合意をする国が、危険な国家になるとは考えにくいからです。

しかし、一方的にアメリカがイランを敵視して挑発的行為を続ける以上、なんらかのメッセージを送るしかない、それが経済制裁緩和をもとめての今回のホルムズ海峡閉鎖、イギリス船への拿捕だったのではないでしょうか。
さて、わが国日本はイランのメッセージにどう答えるべきでしょうか。

アメリカのトランプ大統領は日本に対し、ある無理難題をふっかけてきました。

無理が通れば道理が引っ込む?

トランプ大統領は、日本政府に対してペルシア湾のタンカーの航行安全のため、有志連合と称して海上自衛隊の派遣を要請しました。

このホルムズ海峡問題以前、トランプ大統領は日米同盟はおかしいと発言しました。つまり、日本が攻撃を受ければアメリカが助けるが、アメリカが攻撃を受ければ日本は助けてくれるのか、ということです。

そして、今回の有志連合を日米同盟の一環として海上自衛隊の派遣を要請しました。
しかし、これはおかしい理屈です。

今回拿捕されたのはイギリスの船であり、アメリカへの攻撃ではありません。百歩譲ってアメリカ軍艦へのイランのドローン接近をアメリカへの攻撃としても、イラン自体がドローンの撃墜の事実はないといっているのです。

そもそもが日米同盟とは、中国やロシアによるアメリカに対する危機を防衛するため日本と協力するというものであり、アメリカの戦争への従軍条約ではないはずです。

しかし公式には日本がこれに参加するか未定ですが、現にすでに参加しているとの情報もあります。真偽はわかりませんが、私は将来的に日本も参加するのではないかと思います。

というのも、東アジア情勢が混乱している現在、もし日本に有事が起きたらということを考えると、理屈のみで人は動かない以上、やはり日本もアメリカと共同歩調をとることが無難だからです。

まとめ

まずホルムズ海峡の閉鎖により、全世界の石油消費量の2割に影響がでる深刻な事態であるということがわかりました。

そして、今回の事件の発端は、推測になりますがアメリカの意向をうけてイギリスがイランへ挑発的行動をしたのが理由であると思われます。

アメリカがイランを敵視するのは、イランの強大化を恐れてのことでした。それに対して、イランは経済制裁を緩和してほしいとのメッセージを込めて、今回のイギリス船の拿捕に踏み切ったと思われます。

日本に対してアメリカは、日米同盟と有志連合をこじつけようとしています。日本は東アジアでの有事を考えると、アメリカの無理難題を受け入れざる得ないと思われます。

そもそもイランと日本は友好な関係を築いてきました。これが、今回のアメリカの無茶な理屈により壊れてしまうのは本当に悲しいことです。

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