ジーソミア(GSOMIA)とは?わかりやすく解説【破棄の日本への影響】

※11月22日、韓国のムンジェイン大統領によりジーソミア(GSOMIA)の破棄は解除されました。最後の最後で現実路線を取ったと言えます。ジーソミア問題の発端や、破棄された場合の影響などはこの記事を参考にしてください。

※韓国がジーソミア延長に踏み切ったと思われる理由はこちら。

韓国がジーソミア(GSOMIA)の破棄を撤回した理由はなぜ?【延長の背景】
韓国とのジーソミア(GSOMIA)破棄の期限まであと少しとなりました。

11月23日を持って、日本と韓国のジーソミアは失効します。

ジーソミアって何?

簡単に言えば「複数の国で協力して、軍事情報を共有しましょう」という安全保障の仕組みです。

韓国が日本とのジーソミアを破棄するということは、「もう日本とは軍事協力しないよ」ということ。これは今までの経済戦争の話とは訳が違います。
ただ、韓国がジーソミアを破棄して具体的に日本にどんな影響があるのか?あまりピンと来ないと思いますので、今回のニュースがいかに重大な問題であるかをわかりやすく簡単に解説します。

おさらい:日韓経済戦争の流れ

そもそも、ジーソミアの破棄は韓国が突発的にやりだした事ではありません。まずは日韓問題の一連の流れを簡単にまとめます。

1.日本が韓国に輸出規制する
2.韓国の反論&不買運動
3.韓国、ブチ切れてジーソミア破棄←イマココ

ジーソミアのことだけ知りたい!という場合はこちらをクリックしてください。

日本が韓国に輸出規制する

まずは、日本が韓国に輸出規制をしたのが発端です。

日本にとって韓国は非常に大事な貿易国の1つであり、韓国に様々な品を輸出していました。当然、そのなかには軍事転用可能な危ないアイテムも含まれます。
ただ日本は韓国に

「韓国さんは安心できるから、審査とかせずにガンガン輸出してあげるよ」

と約束していました。これがいわゆるホワイトリストです。その代わり、危険なアイテムも輸出する以上は使いみちをしっかり記録してねという約束なわけです。

ところが、どうも日本の輸出量と韓国の使用用途の量が合わない。

それこそ、不正に北朝鮮などに危険な素材を輸出しているんじゃないか…と疑ってしまうほど、不可解な記録が残っているわけです。

「しっかりと記録できないなら、韓国さんはホワイトリストから外すよ」

と日本が決めたのが今回の経済戦争の発端。

ただ、輸出規制といっても別に輸出しないわけではなくて、今まで手続きは必要なかったけど、輸入には手続きが必要になる、というだけの話です。
それに「ホワイトリスト」に入っていない国は韓国に限った話ではなく、東南アジアなどはいずれもホワイトリストではなく、毎回申請が必要な立場です。
何より、あくまで韓国が輸入品の使用用途を明確にしていないことが根本的な原因であり、いわば日本は逆ギレされてしまっているわけですね。

韓国の反論&不買運動

ホワイト国から外された韓国は、日本に反論します。

特に、最近「徴用工問題」が話題になっていた事もあり、韓国側は「徴用工問題で責められてるからって、輸出制限であてつけするなよ」と言ってきています。
そして、国民の中には不買運動を始める動きも出てきたわけです。

徴用工問題を反省もせず、さらには輸出制限で反撃してくるなんて、日本人はまったく反省していないじゃないか!と。

ニュースでも話題になりましたが、ユニクロの前で日本製品不買を訴えるプラカードを持っている韓国人がいたり、日本への観光客も減って韓国⇔日本便も減便となりました。

もちろん、韓国人全員が不買運動をしているわけではないし、あくまで多くの国民は政治上の問題と人の交流は切り離して考えていることは言うまでもありません。

徴用工問題とは?

戦争中、日本が炭鉱夫などの不足を補うために韓国人を強制的に徴用して働かせた!

というのが徴用工問題。世界遺産に認定された軍艦島すら、韓国人によってケチを付けられている始末です。(ちなみに、軍艦島は日本のなかでもっとも家電3種の神器が早く普及した土地であり、仕事はキツイ代わりに収入には困らない島でした)

そして、あろうことか「日本が徴用工問題を反省しないし、炭鉱で働かせていた日本企業には賠償金かけるよ」と韓国に支社がある日本企業に対して賠償金を命じたわけです。当然、こんな私刑のような賠償を日本が許せるはずもなく、「徴用工問題」として今も続いているわけです。

韓国、ブチ切れてジーソミア破棄

ただ日本からしてみれば、

いや、お前らが輸入品の管理しっかりすれば問題ないやん

という話です。

なので日本側としては「とりあえずデータ出せ!」と言っているわけですが、韓国はそれに応じず。むしろ日本側が対話を拒否してるようなオーラすら出しています。

外相会談が行われるも、進展なし。
ただ、輸入が面倒になると韓国側がジワジワと困るのは事実。そこで、韓国は新しいカードとしてジーソミアの破棄をチラつかせて来たわけです。

ジーソミアとは?わかりやすく解説

ジーソミア(GSOMIA)は正式には「軍事情報に関する包括保護協定」

ただ、そう聞いてもピンと来ないので、「仲が良い国同士で、軍事情報を共有するクラブ」みたいなものだと思えばOKです。

例えば、日本と韓国にとって目の上のたんこぶである北朝鮮。

今年も元気に金正恩がミサイル発射しているわけですが、北朝鮮の動向を知る上では、やはり北朝鮮に近い韓国のほうが情報収集しやすいことになります。

ただ、ミサイル軌道の計算技術などは日本のほうが上だったりして、そういった情報を韓国に共有し、反対に韓国も北朝鮮に関する情報を共有してきました。
他にも、中国やロシアの問題もあります。

ヤクザみたいな国ばかりある東アジア地域において軍事同盟が重要なのは言うまでもありません。だからこそ、ジーソミアには大きな価値があるわけです。
けど、韓国はそれを破棄すると言ってきた。

つまり「北朝鮮に何か動きがあっても、日本には情報渡さないよ」ということ。ここまで来ると、もはや同盟国と言っても良いのか怪しいレベルになってきます。

日本からの情報を受け取れないぶん韓国も困るけど、日本も困る。「どっちも得しないけど、日本が”不当な”経済制裁を続けるならこっちもジーソミア破棄するぞ」と人質にしてきたわけです。

ジーソミアってどんなやりとりがあるの?

1.北朝鮮のミサイル問題
2.北朝鮮情勢

ほぼ、北朝鮮のミサイル問題です。

特にミサイル発射の情報は北朝鮮に近い韓国のほうが入手しやすいことになります。

もっとも、「弾道予測」は韓国より日本のほうが正確です。なんせ北朝鮮のミサイルの大半は日本に向かってくるので、立地的にどうやっても日本のほうが正確な着弾地点を予測できるからです。

それに、ミサイル発射情報だってアメリカからもらえます。なので、ミサイルに関しては韓国とのジーソミアを破棄してもそれほど困らないのが本音で、むしろ韓国側に自爆感があるのは否めません。

そして、もう1つ。

ジーソミアでは北朝鮮情勢がやり取りされています。

むしろ、日本としては韓国からその情報がほしい。

例えば、少し前に北朝鮮と韓国の国境である板門店で脱北者が出ましたよね。

脱北者が増える=北朝鮮で深刻な問題が起きているということ。脱北者や工作員などの動きは北朝鮮に近い韓国のほうが断然把握しやすいし、日本としてはそういった情報をジーソミアに期待しているわけです。

北朝鮮情勢が不安定になれば、日本への脱北者が増えるかもしれない。⇒警備を増強しておこうとか。他にも北朝鮮で重役が処刑されたりなんてニュースも流れますが、そういったときは北朝鮮が突飛に出る可能性も高く警戒が必要になるわけです。

もう1度まとめるとジーソミアでやり取りされているのは、

1.北朝鮮のミサイル問題
2.北朝鮮情勢

の2つがメインということになります。

ジーソミア破棄による日本への影響

ジーソミアを破棄することによる問題点は2つ。

1. 今後、韓国しか知り得ない軍事情報が日本に入ってこなくなる
2. 日本やジーソミア締結国の情報が漏れる可能性がある

2つともわかりやすく解説します。
個人的に、2のほうが問題な気もしますね。

1.韓国からの情報が入ってこなくなる

すでにお話した通り、韓国から北朝鮮の情報が手に入りづらくなります。

もっとも、ミサイル防衛に関してはそれほど大した影響はありません。本当に大事なのは北朝鮮の情勢が分かりづらくなることで、これは日本の防衛や外交にとって不利に働きます。
例えば、「脱北者が多く、深刻な食糧問題が北朝鮮で発生している」となれば、食料援助などをカードに拉致問題などを効果的に解決できるかもしれない。

けど、ジーソミア破棄によって北朝鮮情勢がわからなくなる。これが日本にとっての大きなデメリットと言えます。

もっとも、ジーソミアってせいぜい数年くらいの仕組みです。

前大統領のパククネさんの時に決まったものですし。

そして、数年で韓国から期待していたような情報が入ってきたかと言えば、それほどでもないわけです。だから正直なところ、日本としては韓国とのジーソミアを破棄したところでそれほど影響はないです。

2. 日本や同盟国の情報が漏れる可能性がある

ジーソミアは日本と韓国だけの約束事ではありません。

日本は同じようなルールをアメリカやイギリス、フランス…要は西側諸国と結んでいます。これが防衛の要なわけですね。
そして、ジーソミアでは

共有してる情報は、漏らさない

というシンプルながら重要なルールがあります。

当たり前ですが軍事機密を共有する以上、戦闘機の武装だって安易に漏らすわけにはいかないし、お互いが情報を守らなければいけません。
ところが、韓国は日本とのジーソミアを破棄する。

つまり、日本からこれまで受け取った軍事機密を必ずしも守る必要はないわけです。例えば、北朝鮮への交換条件として日本の軍事機密をバラす..なんてしても良いわけですね。

さらに言うと、日本を通じて韓国が得た西側諸国の軍事機密をバラすこともできるかもしれません。日本と韓国だけの問題ならともかく、こうなるとそれ以外の国からしても迷惑なコトになります。
だから

「ジーソミアを破棄しても日本には影響はない」

というものの、日本にもダメージがあるのは間違いないです。もちろん、韓国側にもメリットは何1つないので日本を巻き込んだ自爆ではありますけどね。

韓国のジーソミア破棄による各国への影響

ジーソミアを破棄することで、日本にとっても韓国にとってもメリットがない事がわかったと思います。

では、それ以外の国からしてみたらどうなの?という各国への影響を見ていきたいと思います。

北朝鮮

一人勝ち。

日本と韓国がケンカして一番喜ぶのはどこか?北朝鮮です。
北朝鮮からすれば最悪なのは、日米間が連携して圧力をかけてくることです。もともと、他の国の弱みにつけ込んで譲歩を引き出す外交戦略なので、日韓が仲違いするのは大歓迎。

実際、日本と韓国の仲が悪くなければ北朝鮮は韓国に近づきやすくなります。まさに北朝鮮にとっては今の状況は理想的ですね。

中国

日本ほどではないけど、勝ち。

中国の野望は、東アジアからアメリカを追い出して自分が東アジアの覇者になること。そのためには日米韓の連携は邪魔で仕方ありません。
そもそも中国が尖閣諸島はじめ沖縄方面にちょっかいをかけてくるのは、中国の太平洋進出において日本の立地が完全にフタになっているからです。

けど、ジーソミアを破棄して日本と韓国の軍事同盟が薄れるなら、中国としては願ったりもないことです。中国が何もコメントしないときは、たいてい自国に都合が良いことが起きているときですね(笑)

アメリカ

日韓の連携が乱れれば、アメリカにも影響があります。

そもそも、アメリカは今中国との経済戦争の真っ最中で、日本と韓国におとなしくしていてほしいのが本音。たとえ経済問題で軍事を人質にする韓国の行動に問題があると理解していても、「どっちでもいいから、さっさと解決しろ」と思ってるわけですね。
それに、アメリカはもうすぐ大統領選挙。

トランプ政権は「北朝鮮を抑えた」という実績がほしいのに、これ以上北朝鮮に暴れらたらいい迷惑です。なので、比較的聞き分けの良い日本に「まあ、お前が折れろや」と言ってくる可能性は充分にあります。

結局、日本が折れるいつものパターンですね。

日本

ジーソミア破棄で、日本へ影響があるのは既にお話した通りです。

また、アメリカをはじめ日本と軍事協定を結んでいる国にも。
すると、それらの国から「日本はそんな問題も自分で解決できないのか…」と評価が下がる可能性はあります。

日本からしてみれば韓国が逆ギレしているようなものですが、周囲の国からすればそんな事情には興味がなくて、単に両国の摩擦が問題を起こしているとしか思われないので。

韓国(ムン大統領)は、北朝鮮と和解したい
日本にとって、北朝鮮は完全に敵国です。

でも、韓国にとって北朝鮮は「和解すべき同胞」でもあります。特に、現在のムン大統領は就任前から北朝鮮との融和を進める人として有名でした。実際、今では金正恩と会談するようにもなったわけです。

だからムン大統領としては

そもそも、ジーソミアで北朝鮮と敵対するのは望ましくない

というところもあるわけです。

これが日本やアメリカとの決定的な違いで、むしろこの同盟を「民族融和をジャマする協定」と捉えているフシも北朝鮮に対する考え方が違うからこそ、今回のような問題も起きるわけですね。。

ジーソミア破棄による日本経済への影響

仮に、韓国が日本とのジーソミアを破棄した場合。

これは日本と韓国それぞれの安全保障が低下することでもあるので、円安&ウォン安に触れる可能性が高いです。

すると、通常の円安と同じように輸出業は儲かる(株価が上がりやすくなる)反面、輸出業は苦戦することになり株価が下がる可能性があります。

また、ジーソミア破棄による直接的な結果ではないのですが、このままいくと単純に日韓の摩擦が長期化する可能性が高いです。

少なくとも、今から1週間以内にホワイト国問題ふくめすべて解決するビジョンはまったく見えないですよね。

すると、韓国と日本経済にとってはどちらもマイナスの影響しかありません。

韓国は輸入がしづらくなり、サムスンをはじめ大企業すら困り始めています。一方の日本も、輸出できるはずの品が輸出できなくなれば業績が落ちる企業が出てくる。

結局、両者の株を奪う形で中国や台湾などがシェアを持っていく可能性が高く、今の日韓関係が続くと経済にとっては1つも良い事はありません。
それに、日本への韓国人観光客も減っていますしね。

いや、ジーソミアの破棄をチラつかせてから即座に「ホワイト国に戻すわ!」と韓国に応じてしまったら、今後毎回ジーソミアを人質にしてきそうなので折れるのが正解とは思いませんが…

ジーソミア破棄でどうなるのか?

日本人の立場からすれば

ジーソミア破棄する前に、先に輸入品の使途データ出せや

という感じではありますが…ただ、中国やロシアが活発になっている状況で、軍事同盟が揺らぐのは日本はもちろんアメリカも困ります。
なので、アメリカから日本や韓国に対して今後

「経済問題をさっさと片付けろ!」
と圧力がかかる可能性はあります。

最悪、今の状況を放置していると韓国がレッドチームに入ってしまう可能性もありますし、トランプ大統領としてもそれは全力で阻止したいはずですからね。

あと、個人的に気になるのがジーソミアの問題だけではなくアマゾン森林火災のニュース。

日本では今、ジーソミアのニュースばかり報道されている印象ですが、世界的にはこっちの問題がはるかに問題になっています。BBCなど大手メディアも連日のように取り上げていますし。

何より、この問題の本質も「国家間対立」ですからね。

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