12月12日、イギリスの総選挙においてEUから離脱することが決定。
ボリス首相率いる与党・保守党の大勝利に終わりました。
「イギリスのEU離脱って、前からずっと言ってなかったっけ?」と思いませんでしたか?
2016年に国民投票でEU離脱が決まったのに、なぜ3年経った今もこんなに国内で揉めているのか。実を言うと、今回の総選挙でイギリスのEU離脱が確定…と言われているにも関わらず、実は未だにそうではなかったりします。
「結局、どうなったの?」
「イギリスは何をしてるの?」
知っているようで意外と知らないイギリスのEU離脱の現状について、今後のスケジュールや予定とともに紹介していきます。
イギリス国民はブレグジットを受け入れているのか?
まず、イギリスがEU離脱(ブレグジット)で揉めている理由の1つが国民の反発です。
12月の総選挙でEU離脱が決定したのだから、国民の多数派が支持しているのだろう…と思いきや。実は国民投票においては、離脱反対派のほうが多数を占めています。
(2016年の時点では賛成、反対の数字が逆です)
離脱賛成派→46%
離脱反対派→51%
では、どうして離脱が決定されたかと言えば、12月12日に行われたのがイギリス総選挙だったため。この選挙により与党・保守党が勝利したためです。
「なるほど。与党がEU離脱反対派で、選挙で勝利したから離脱が決まったんだな」
と納得してしまいそうになりますが、実を言うとこれも事情がなかなか複雑で、与党(保守党)と言えどもEU離脱に関しては一枚岩ではなく、現在でも揉めているところです。
イギリスは上から目線でEU離脱を申し出た
保守党内部でも離脱について意見が分かれますが、その理由はイギリスがEU離脱を表明した過去の出来事と関係があります。
話は2017年3月にさかのぼります。イギリスは当時、EUに次のような申し出をしました。
①イギリスはEUの市場から脱退します。
②EUとは自由貿易協定を結べば従来通りの関係です。
③もしこの申し出を受けないなら、テロ対策や安全保障での協力に支障がでるぞ。
この申し出は、イギリスはEUから抜けるが関税などの経済的メリットは貿易協定で保証してほしい。しかし、分担金や移民受け入れは行いません。言うことを聞かなければ、安全保障に協力しません。という高飛車なものです。
わかりやすく言うと
「EUで自分が損する部分は拒否するけど、EUの恩恵だけは続けて受けさせてね☆」
ということです。
そして③は「断ったら、防衛の協力はしない」ということ。なんだか2019年に、経済問題の報復として防衛問題(ジーソミア)を持ち出してきた韓国の行動を思い出しますね(笑)
当然、EUはイギリスの態度に激怒。
予想以上に反論に驚いたイギリスは、EUとの関係改善のために次のような離脱協定を提案します。
①離脱するための清算金を支払います。
②アイルランドとの国境審査は厳しくしません。
だいぶトーンダウンしましたね。
ところが、このメイ前首相の協定案が保守党の分裂を引き起こしました。
メイ前首相反対派の言い分は「アイルランドとの国境審査が厳しくないという条項は受け入れられない」というもの。ただ、正直なところ日本人からすると「アイルランドってそんなに大事なの?」と思ってしまいますよね。
そもそも、アイルランドはイギリスの隣国。
どちらもEU加盟国です。両国は例えるなら、日本と韓国、または日本と台湾のような関係とイメージしてもらえると分かりやすいでしょう。
現在、イギリスはアイルランドの北東部の一部を「北アイルランド」という国としてイギリスの領土としています。当然、アイルランドの人たちはイギリスからこの地域を取り戻したい考えです。
アイルランドの人たちは北アイルランドに「IRA」という反政府武装組織を結成しました。彼らは北アイルランドをはじめとして、イギリス国内でもテロ活動を行っています。
そもそも、離脱賛成派はイギリスがEUに留まることで移民に加えてテロリストなども国内に入ることを心配していました。イギリスの治安回復のためにも、アイルランドとの国境審査を厳格にしたい考えです。
しかし、離脱しても国境審査が従来通りなら意味がありません。ですから保守党の一部がこの条項に猛反対したのです。この提案により、保守党の4割がメイ前首相のもとを離れたそうです。
仮に自民党議員の4割が「反、アベ!」とか言い出したら大事件ですよね(笑)
この協定案には裏話があって、EUがイギリス離脱を阻止するためにこのアイルランドに関する条項を加えることで、保守党の分裂を図ったとのこと。
なので保守党が一致団結してEU離脱を指示してるわけではなく、EUとの離脱協定の内容によっては保守党も反対に回りかねないという不安定な状況になっています。
ここで、今回の総選挙では離脱が未定だという理由が、離脱協定にあることが見えてきました。次に今後のブレグジットのスケジュールについて調べてみます。
EU離脱、イギリスの今後のスケジュール
イギリスは来年1月31日をもってEUから正式に離脱することになりました。
これを受けて外為市場ではポンドが急騰。
しかし厳密にいえば、1月31日から11か月間の「移行期間」に入ったのにすぎず、正式に離脱したわけではありません。というのも、11か月の間にイギリスとEUとの離脱協定があってはじめて離脱となるからです。
要は、11か月の交渉期間をもらったのにすぎないのです。
なので、イギリスは未だEU離脱で揉めている真っ最中。
この間に、ボリス首相はEUが納得する条件と、保守党が納得する条件をひねりださなければなりません。これは至難の技ですし、ボリス首相としては中間管理職もビックリの板挟みに苦しんでいる状態です。
アイルランドの国境審査の問題で、EUまたは与党の反対派を説得できるかどうか。
それによって「そもそもEUを離脱するかどうか」「いつ、どのような条件で離脱するか」が決まります。なので2020年1月31日に離脱するといってもそれはXデーではなく、本当のXデーはその1ヶ月後と覚えておいてもらうといいですね!
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