EUがドイツ一人勝ちな理由、覇権国としての立ち位置と負担

EUは、「ドイツ第四帝国」とも言われます。

EUという集合体は、実質的にはドイツをリーダーにした上下クラブではないかと。
ただ、ドイツもEU開始直後から今のように強い影響力を持っていたわけではありません。

ドイツがEUの覇権国となり今の立ち位置を手に入れたのは、「ユーロの買い占め」をしたから。EUに流通するユーロを一手に収めたことが、ドイツの一人勝ちの理由です。

なぜ、ドイツが一人勝ちに至ったのか?

また、その一方でドイツにはどんな負担があるのか?をお話します。

ドイツの経済力

2017年、ドイツの人口は8200万人

年間3兆4000億ドルを稼いだ国でもあります。
この数字はEU最大であり、国際的にみても2016年にはこれまでの首位だった中国を抜いて世界最大の経営黒字国に転じました。

1990年以前にはドイツは東西に分かれており、西側諸国の西ドイツは日本と同等の経済大国でした。それが、東西ドイツの統一により1990年から10年間は経営赤字に陥ってしまったのです。理由は、東ドイツとの経済格差が原因でした。
しかし、今やドイツは世界屈指の経済大国。

ドイツが経済大国に返り咲いた背景には、シュレーダー前首相による2003年の労働市場改革がありました。この政策は一種の排外主義に近いものと言えます。

シュレーダー前首相の労働市場改革をざっくりといえば失業者を減らすこと。

①労使協調により労働者の賃金の値上げを抑制する代わりに企業は雇用を維持すること
②企業に解雇を認めるが、政府はすぐに労働者に別の仕事を与える

この経済政策が功を奏し、ドイツは復活を遂げました。

さらにはサブプライムローン、リーマンショックというアメリカ発の金融危機や、ギリシャの経済破綻といった国際的経済問題からもすばやく立ち直っています。

これだけ見ると、ドイツは有能なリーダーによって復活を遂げたと言えます。

ただ、実際にはドイツ経済が再生したのは経済政策だけが理由ではありません。ドイツが「EUドイツで一人勝ち」と言われるようになった背景に、EUの影響がありました。

ユーロがドイツの一人勝ちの追い風に

EUとは、ヨーロッパにある27か国の連合体をいいます。

この連合体の通貨が「ユーロ」ですよね。
このEUは、連合体ですが、各国とも独立の国家でもあります。その中には、裕福なドイツ、イギリス、フランスもあれば、貧しい東欧諸国や経済破綻をしたギリシアもあります。

ここで各国におけるユーロというものを考えたいと思います。例えとして、EUで最も裕福な国としてドイツを、最も貧しい国としてギリシアを挙げます。
ドイツの経済力に裏打ちされたユーロは、世界がドイツの経済力を信用するため、本当に価値のある通貨だといえます。

しかし同時に、最も貧しい国のギリシアの経済力は信用できません。とすれば、ユーロの価値は低いともいえます。この一見矛盾する説明こそがドイツがユーロを買い占めることができた理由です。

ドイツがいくら経済的に裕福でも、その通貨ユーロは、EUの他の国の経済力により薄められてしまい、通貨としての価値は低くなります。

そこでドイツはその経済力をもって、安いユーロを安価に買い占めることができたわけです。貧しい他国はユーロをドイツに奪われてしまい、ますます貧しくなるという構図が浮かび上がるかと思います。

本来より通貨が弱いドイツ

今の世界は、変動相場制です。

「今日は1ドル110円~」なんてニュースで聞きますよね。これは通貨の人気を示すもので、人気(信頼)通貨ほど価値は高くなります。日本の通貨の価値が上がった時を円高と呼びますよね。

ドイツはかなりの経済大国です。

本来であればドイツの通貨は高くなり、そのぶん輸出力や観光業の力が落ちます。ドイツの通貨の価値が上がるということは、今まで300万円で買えていたドイツ車が、400万に値上がりするようなもの。

当然、輸出力は落ちるわけです。
ところが、ドイツは今EUでユーロという通貨を使っていきます。

先程もお話したように、EUの中にはギリシャや東欧など通貨の信頼が低い国もあります。ドイツの存在がユーロ高を誘導する一方で、経済の弱い国がユーロ安を誘導し、結果的にドイツ本来の国力よりも通貨が安く抑えられます。

だから、ドイツの経済力は上がり続けているのに、輸出力が落ちていないわけです。

かつて日本は1ドル360円だった時代もありましたが、この頃は安く良い商品を出荷できたので製造業が全盛でした。今のドイツは、EUのおかげでこれに近い輸出が出来ているわけですね。

ドイツがEUの他の国を搾取している
ドイツ第四帝国

と言われるのはこれが理由です。

EUの覇権国としてのドイツの負担

ただ、ドイツも美味しい思いをしてばかりではありません。

イツは自国経済より安く抑えられているユーロで儲けられる反面、他の国に資金援助したり、積極的に難民を受け入れることで負担をおっています。

記憶に新しい、ギリシャ破綻問題。

ギリシャが開き直って「いいのか?支援してくれないと破綻しちゃうぞ?」と逆にEUを中心としたドイツを脅したため、結果的に一番お金を出したのはドイツです。

また、最近では「第二次世界大戦の賠償金を払え!」なんてことをギリシャやポーランドが言い出しており、なんだかんだドイツも経済的な負担を強いられているのは事実です。
なので、ドイツの一人勝ちではあるけど良い思いばかりではない。

それどころか、難民問題含めEUの最終的な失敗はドイツに押し付けられている側面があるので、EUはドイツ第四帝国的な側面がある一方で、必ずしもドイツが良いところ取りばかりしているわけではありません。

ドイツの覇権国化を後押ししたフランス

ユーロ以前、ドイツにはマルクという円に匹敵する強力な通貨がありました。

この強力な通貨を恐れたのがフランスでした。

フランスはドイツ経済を弱めるためにEUを構想してユーロ導入をすすめたのでした。つまり、ドイツ経済が他の貧しいヨーロッパ諸国の経済に希釈されるとみたわけです。しかし、上記のようにドイツはフランスの策を逆手にとって、自国を優位に立たしめたのです。

フランスは「自国こそが第1位」といってはばからない国。でも経済では到底ドイツ叶わず、政治的発言力だけでもドイツに渡さないようにしました。

でも、結果的にはEUの覇権をドイツが握りました。

ウクライナ問題に関するロシアのプーチン大統領との会談も、対ギリシア政策の話し合いも、女帝メルケルが行ったことは記憶に新しいです。フランスは政治的な面でもドイツに敗れたといわざるえません。

「策士、策に溺れる」という言葉が目に浮かびます。

まとめ

結局、EUにおいてドイツが一人勝ちな理由は、ユーロの買い占めにあったことがわかります。

立ち位置としては、経済的にも政治的にもドイツの「独裁」というのは過言ではないでしょう。もちろん、負担もそれなりにあるでしょうが、それは経済支配によることで採算がとれていることでしょう。
今年の1月、ドイツのニュルンベルクに1人旅をしました。その途中、街中であるポスターを目にしました。それは、ヒトラーのような恰好をしたメルケルのポスターでした。ドイツによるヨーロッパ支配の象徴がこのポスターの真意なのでしょう。

余談ですが、ニュルンベルクという街は、ナチスの戦犯を裁いたニュルンベルク裁判が行われた街として有名です。なにか皮肉めいたものを感じた旅でした。

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